提言・調査・報告
共同声明「コンクール等の応募要領における権利擁護に関する声明文」[2025.04.14]

当連盟は2025年4月14日に以下の「コンクール等の応募要領における権利擁護に関する声明文」を共同で発表しました。


コンクール等の応募要領における権利擁護に関する声明文


 子供を対象とするものから、プロを対象とするものまで、様々な美術に関するコンクール等が開催されております。これらのコンクール等は美術家の励みとなり、日本の美術の振興に大いに役立つと共に、子供たちの美術への関心を高め、美術家になる一助になるなど、美術の世界の発展にとても大きな寄与となっており、感謝に堪えません。

 ただ、そうしたコンクール等の応募要領を見てみると、応募者に対して主催者に応募作品や入選作品の著作権を譲渡させ、更に著作者人格権の不行使も約束させるものが散見され、更に応募作品はコンクール等終了後も返却しないとされている例も見られます。

 私たちは、このような規定を設けることは不要であり、不適切だと考えます。一般的に主催者は、コンクール等の発表や、その広報や宣伝、また記録のために、冊子・チラシ・ポスターなどでの利用や、ホームページやデジタルアーカイブでの利用ができれば十分なはずであり、著作権を主催者に帰属させる必要はありませんし、応募者の所有物である作品を返却しないでよい理由はありません。
 一方、著作権を譲渡してしまった入選者は、自分を紹介するホームページにその作品を掲載することにさえ主催者の承諾が必要になるばかりか、自身の作品集を出版するときにも主催者の承諾が必要になります。
美術作品は作者の人格の反映です。その作品を自由に改変したり、著作者名を表示しないで利用する権利を主催者が持つ必要はありません。著作者人格権の不行使特約は不要です。
 私たちは、コンクール等の趣旨やその後の入選作品の利用予定を踏まえた上で、出来るだけ応募者の権利を尊重する応募要領を定めていただきたいと切に願うものです。

以上

※下段に補足説明あり。

<本件に関するお問合せは下記までお願い致します。>
一般社団法人日本美術著作権連合 事務局
電話:03‐6826‐2208  e-mail:info@jart.tokyo




【補足説明】

声明文についてのご説明

 応募要領ご担当の方は、従来からの規定を無批判にそのまま用いているのかもしれません。この声明は、現在採用している応募要領が、著作者の権利を考えずに、著作権を譲渡させる内容になっていないかなどを見直し改めていただきたいというものです。

 また、応募要領の中には、応募作品の返却について明記されていないものが散見されます。あるいは、記載があっても受賞作品の所有権が主催者に譲渡されると記載されているものも存在しています。しかしながら、応募作品の所有権は応募者にあります。

 後述する例外的な場合を除けば、主催者はコンクールの紹介や記録としてWebサイト上も含め無償で利用できれば十分なはずです。逆に著作権を譲渡してしまったら、受賞者は主催者の許諾なく自分の作品を利用できなくなってしまいます。

 例外になるのは、会社や商品のシンボルキャラクターやゲームソフトに用いる登場人物の絵柄等、商業的に長く、また会社(主催者)の意図に基づく様々な改変を含めて用いることが予定されているもののコンクール等です。その場合であれば、著作権譲渡を受ける必要や著作者人格権の取り扱いに関する取り決めを求める必要があることも理解できます。

 その場合には、その旨を明記した上で、受賞が決まったときに、著作権譲渡等の説明をして、改めて著作権譲渡などの書面の交換をするようにしてください。作者が自分の履歴や作品集などには自由に掲載できることなどの配慮もお願いします。 また、賞金も、そのような著作権譲渡に応じた適切な額にしていただくようお願いいたします。

 作品それ自体の所有権についても同様です。主催者の美術館その他の所に長く展示する作品の募集のような例外的場合を除き、所有権の移転の必要はありません。例外として所有権も移転させる場合は、そのような作品の売買価格としての相当な賞金額を設定して下さい。

 また、応募作品が多数に上り返却作業が困難な場合もあろうかと思います。そのような場合でも、返却を希望する応募者にだけでも返却するよう努めて下さい。一次審査は画像データを送ってもらい、二次審査だけ実際の作品を送ってもらうなどの方法も考えられます。やむを得ず返却を行わない場合には、返却が困難なことを説明して目立つように記載するなどの配慮をお願いします。




私たちが考える「応募要領」の例を参考までに記します。

① 一般的な著作権の譲渡などを行わない場合の応募要領の例

『 入賞作品を含む応募作品の著作権は応募者に留保され、主催者には移転されません。
 ただし、主催者はコンクールの紹介や記録として、入賞作品をWebサイト上も含め無償で利用できるものとします。
 入賞作品は、展覧会終了1週間後まで主催者が預かり展示などをさせていただきます。展覧会終了後、返却させていただきますので、本人確認のできる身分証明書をお持ちの上、1週間内に引き取りに来てください(配送希望の連絡をいただいた場合は、配送業者を用いて着払いにて返送いたします)。故意や重大な過失なく作品が破損した場合の責任は負いかねますのでご理解ください。
 なお、展覧会終了後半年を過ぎて返却のご連絡がない場合は受取放棄と判断して処分させていただきます。』


② 例外として著作権の譲渡などを求める場合の応募要領の例

『 最優秀作品は、弊社の商品「***」のマスコットキャラクターとして長く利用させていただきます。そのために主催者に著作権を譲渡していただきます。また、①キャラクターの利用に際して著作者名を表示しないこと、②使う場面に応じてやむをえない変更を加えることに同意していただきます。この場合、予め著作者の方にご連絡ご相談させていただきます。
 詳しくは最優秀作品に内定したときに事前にご説明させていただきます。』


以上


2025年4月14日

一般社団法人 日本美術著作権連合
  (以下、所属団体)
一般社団法人 日本美術家連盟
公益社団法人 日本グラフィックデザイン協会
一般社団法人 日本児童出版美術家連盟
一般社団法人 東京イラストレーターズ・ソサエティ
一般社団法人 日本図書設計家協会
一般社団法人 日本出版美術家連盟
一般社団法人 日本理科美術協会