提言・調査・報告
共同声明「インボイス制度の拙速な導入に反対します」[2022.11.28]

当連盟は2022年11月25日にインボイス制度への反対の声明を以下のように共同で発表しました。


インボイス制度の拙速な導入に反対します

私たちは、著作者の団体であり、団体を構成するメンバーのほとんどが個人事業者です。また、その多くが免税事業者に該当します。
これまで、中小企業庁では、消費税転嫁対策特別措置法(2021年3月31日失効)に基づき、免税事業者も仕入の際に消費税を負担しているため、発注先である個人事業者が免税事業者であることを理由に、発注元が消費税の支払いを拒否することのないよう消費税転嫁対策室が指導を行ってきました。
しかしながら、2023年10月1日より導入が予定されているインボイス制度に基づくと、個人事業者たる免税事業者にとっては、①適格請求書(インボイス)発行事業者(課税事業者)になるか、②免税事業者でいるかの選択を迫られます。
仮に免税事業者を選択して、消費税を請求した場合、発注元は、現在は可能な仕入税額控除ができなくなることから、免税事業者を取引から排除するおそれが懸念されます。さらに、発注元は課税事業者・免税事業者を区別して管理する必要が生じることも前記懸念を増大させるところです。
また、売上高が一定金額以下であるなどの要件を満たす小規模事業者について、納税事務負担等に配慮して、消費税の納税義務を免除する事業者免税点制度に変更はないものの、この度のインボイス制度がそれを有名無実とするのは、前述のとおりです。
財務省によると、消費税の免税点制度は、「小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮から設けられている特例措置」と説明していますが、状況は変わっていないどころか、寧ろ導入予定のインボイス制度により、事務負担や税務執行コストはより大きくなります。
新型コロナ感染症の拡大以降、特に、エンタテインメント・芸術分野に携わる個人事業者は大きな打撃を被っております。収入が大きく減り、疲弊しているところに、物価高騰が襲ってきました。
それにもかかわらず、導入予定のインボイス制度は、上述のとおり、弱者である免税事業者を狙い撃ちするかのような制度になっています。また、課税事業者であっても、個人事業者にとっては、複雑な制度による、事務負担や税務執行コストの増加は、表現活動に大きく影響を及ぼします。
さらに、個人事業者は、適格請求書発行事業者として登録を受けると、氏名や登録番号が「国税庁適格請求書発行事業者サイト」で公開されます。それは、個人の所得に関して類推できる個人情報が公表されることに他なりません。 発注元にしても、導入予定のインボイス制度への対応を検討する段階になり、制度の曖昧さと複雑さに個人事業者への対応に苦慮している事業者も多くあると聞き及んでおります。
殊に、若い世代を育成し、コンテンツ産業を活性化するためには、課税事業者か免税事業者かのストレスなく、コンテンツを創出できる環境が必要です。
報道の限りでは、この度のインボイス制度は、導入を間近にして、混迷を深めていることは明らかで、小手先の対応では、抜本的な問題の解決にはなりません。一層の複雑化を招く危惧さえあります。
以上の理由から、私たちは、この度のインボイス制度の導入に反対し、一刻も早い、実施の中止を求めます。

以上

2022年11月25日

協同組合日本脚本家連盟
理事長 鎌田 敏夫

一般社団法人日本児童文学者協会
理事長 藤田のぼる

協同組合日本シナリオ作家協会
理事長 佐伯 俊道

公益社団法人日本図案家協会
会 長 林  史己

一般社団法人日本美術家連盟
理事長 中林 忠良

一般社団法人日本美術著作権連合
理事長 あんびるやすこ