提言・調査・報告
要望書「文化芸術活動の継続支援事業 補助金の申請と審査に関る要望書」[2020.09.03]

文化庁長官 宮田 亮平 様

文化芸術活動の継続支援事業 補助金の申請と審査に関る要望書

第二次補正予算に基づく「文化芸術活動の継続支援事業」の実施により、多くの美術家が補助金交付の機会を得られますこと、心より御礼申しあげます。また、募集開始より、大きな負荷のかかる現場で日々ご尽力をいただいている事業事務局の皆さまに深く感謝いたします。支援事業に基づく補助金は、今後の美術活動の継続に大きな光を与えるものであり、コロナ禍の期間を乗り切ろうとしているたくさんの美術家が期待を膨らませております。

当連盟は美術家の職能団体であり、補助金募集開始より事前確認証《確認番号》の発行にあたっております。募集開始より二か月、第二次募集の終了となりましたが、美術(写真含む)の採択者数は、8月21日の時点において非常に少なく累計で81件であり、このままではコロナの影響より再起しようとする美術家を支援するという当初の補助金の趣旨が十全に果たされないのではないかと心配しておりました。翌週8月28日には、貴庁並びに事業事務局のご尽力により急速に伸びて100件の採択が報告され、大変うれしく思っております。
他方、私共が発行した確認番号は1000を超え、確認番号を取得せずに申請する方も相当数いることから、美術分野の申請数は優に1000を越えているものと推察します。いまだ結果を得られていない方がかなりの数残っており、また第三次募集にあたり新たに申請される方がいらっしゃることを考えますと、より一層の採択数の増加が望まれますので、第三次募集を進めるにあたり、申請・審査の過程につきまして、下記の事項を要望いたします。


1. 審査期間の短縮
採択事例をいくつか集めたところ、申請より採択通知を受けるまで一ヶ月程かかっているものが半分近くになりました。書類不備等のやりとりによる中断期間もあり一概に言えないと思いますが、現在結果待ちの方もこれに相当するものが多く、結果が出るまでかなりの時間がかかっていることがうかがえます。
事業実施期間が10月末と設定されていることもあり、できるだけ多くの美術家が採択結果を手にして事業実施が可能となるよう審査期間の短縮を是非お願いいたします。


2. 審査段階での問題点の情報提供
前項にお願いする「審査期間の短縮」をはかるためには、事前の準備段階で申請者に注意喚起をはかり、審査過程の修正作業を減らす必要があります。
8月半ば、事業事務局より書類不備等が非常に多く、その旨気を付けるよう周知してもらいたいとのご連絡をいただきました。これに基づき、私共では、サイト「申請の準備と採択事例」を準備し、確認番号を取得された方に申請にあたって気を付けていただくポイントを公開しております。
修正作業を更に減らすため、申請前の準備段階で申請者に留意事項を紹介し、適正な内容での申請を促したいと存じますので、出来ましたら事業事務局より、審査過程において頻度の高い修正項目と修正作業の具体的な内容に関る情報を、当方にご提供いただきますようお願いいたします。


3. 申請・審査過程に関するお願い
1) 募集案内、入力フォームの改訂
(i) 類型化と追加説明が、申請者、審査者、両者の作業負荷を減らすと考えられますので、補助の対象となる取組例(「募集案内」P.11、及びウェブ申請フォームの入力欄「活動内容 (1)②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施」)に下記の事項を追加いただきたいと存じます。
「②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施」
・アートプロジェクトや作品制作のための調査、研究、取材
・コロナ対策をしたうえでの試験的に開催する展覧会
・予定される発表やコンペ応募、受注開拓のための作品の制作、準備
・制作や技法に関する研究会、講習会の開催、参加
・動画配信サイトを通じた無観客展覧会

(ii) 補助対象経費(「募集案内」P.14-17)の各経費事例に、取組例に対応した美術に関係する費用の例をいくつかでも追加いただければ幸いです。(※別紙参照願います)

2) 申請者から比較的多く寄せられる声として、修正要求が散発的に来るというものがあります(例えば1回目に旅費の宿泊日の明細を求められ、これを提出するとまた一週間たって2回目に旅費の交通機関の種類と区間の説明を求められる 等)。時間的にもまた、申請者、審査者の作業負荷から見ても、修正作業は可能な範囲で、一度にまとめてご指示いただければ幸いです。勿論、申請者が初めから正しい書き方ができるよう、記載にあたっての注意事項を私共も申請者に周知するよう努めます。


4. 事業実施期間の延長
事業事務局は勿論、各方面におかれましても審査期間の短縮と採択件数の増加に向けた方策をご検討いただくと存じますが、それでも困難な場合は、現在10月末までとされている事業実施期間の延長を希望いたします。前述の通り採択結果通知までの期間が30日を超える方もいて、第三次募集においても同様の日数を要するとすれば、現在定められた実施期間内に、計画をたてた事業を実現することは困難です。また、現在結果待ちの申請者においても残された日数が日に日に減っていくことにあせりを感じるとの声も聞きます。

美術家の活動は、主に個々の単位で行われるものであり、この度の補助事業が一人一人の活動に焦点をあて、実施されることを、多くの美術家が歓迎しております。先の見えない新型コロナを乗りこえ、一人でも多くの美術家が活動の継続をできるよう、補助金を有効に活用させていただきたいと存じますので、上記の要望事項をご検討いただき、「文化芸術活動の継続支援事業」の更なる発展的運用をお願い申しあげます。


令和2年9月3日
東京都中央区銀座3-10-19 美術家会館5階
一般社団法人 日本美術家連盟
理事長 中林 忠良






参考資料
・美術分野の事業内容(取組例)に応じた経費と費目の事例

事業形態1
‣活動実績をまとめた冊子の作成、配布
〇冊子の制作費(印刷、デザイン等)   雑役務費
〇冊子の運送費    通信運搬費
‣CMやPR動画等の制作、配信
〇動画の制作費   雑役務費
〇配信のためのレンタルサーバー費用  通信運搬費
〇動画撮影機材の購入  消耗品費
‣公演、展示のチラシの作成、配布
〇チラシの制作費  雑役務費
〇チラシの配送費  通信運搬費
‣展示のギャラリートークや講演会の開催
〇会場の賃借費  借損料
〇資料のコピー代  消耗品費
〇講師の謝金  諸謝金
〇設備・備品のレンタル代  借損料
〇会場までの交通費  旅費
〇展示資料等の運送費  通信運搬費
‣美術家の制作活動を紹介するウェブサイトの制作、更新
〇ウェブサイトの制作費・更新費  雑役務費
〇資料作成機材の購入  消耗品費
‣制作した作品をまとめた図録の作成、配布
〇作品写真の撮影費   雑役務費
〇図録の製作費  雑役務費
〇配布のための運送費  通信運搬費
〇評論家等への原稿執筆の謝礼  諸謝金

事業形態2
・技能向上に関する資格取得
〇資格取得、技術向上のための研修会への参加費  雑役務費
・美術関係者向けワークショップ
〇ワークショップ会場費  借損料
〇ワークショップ材料費  消耗品費
〇ワークショップ講師の謝金  諸謝金
〇ワークショップアシスタントのアルバイト代  賃金
〇会場の設備・備品のレンタル代  借損料
〇開催場所までの交通費・宿泊費  旅費
〇フェイスシールド、マスク等感染対策備品費   消耗品費
・アートプロジェクトや作品制作のための調査、研究、取材
〇調査研究のための資料代  消耗品費
〇調査や取材のための交通費  旅費
〇取材のための器具備品代  消耗品費
・コロナ対策をしたうえでの試験的に開催する展覧会
〇試験的展覧会の会場費  借損料
〇出品する作品の材料費  消耗品費
〇出品する作品を制作するための器具、備品 消耗品費
〇周知のためのリーフレットの制作  雑役務費
〇展示用映像器具の購入   消耗品費
〇会場当番アルバイト代  賃金
〇消毒設備の購入  消耗品費
・予定される発表やコンぺ応募、受注開拓のための作品の制作、準備
〇作品の材料費   消耗品費
〇作品のテーマや設置場所に関する取材のための交通費  旅費
〇受注開拓のためのプレゼンテーション用資料制作  雑役務費
・制作や技法に関する研究会、講習会の開催、参加
〇研究会参加のための交通費  旅費
〇講習会の参加費  雑役務費
〇研究会開催のための器具備品費  消耗品費
〇会場設営のためのレンタル備品費  借損料
・動画配信サイトを通じた無観客展覧会
〇展示品の制作のための材料費   消耗品費
〇展示のための備品費  消耗品費
〇動画撮影のための機材費  消耗品費
〇動画撮影のための会場費  借損料

・その他各事業に共通の経費
〇事務備品費    消耗品費
〇打ち合わせ等経費  会議費